大島紬とは、鹿児島県の奄美大島を発祥の地とする絹織物です。
作られているのは主に鹿児島県奄美大島、鹿児島県鹿児島市の二か所です。
着物は日本の代表的な民族衣装ですが、その中でも大島紬は高級絹織物として格式高い着物です。
本物は絹100パーセントの素材でできており、非常に手触りが良く、また意図に直接色を付けた後に織り上げる「先染め」と呼ばれる特殊な染色技法で作られている非常に美しい色合いも特徴です。
またこの絣を作るには、締機(しめばた)で手作業によりタテ・ヨコ絣の加工をしており、その手触りも模様も非常に美しいとされています。
ちなみに絣とは糸または、布に染まった部分と括られて染まっていないない部分のある模様の名で大島では十の字絣といい大きな特徴として着物愛好家にとても好まれているといえるでしょう。
非常に希少性の高いこの着物ですが、その分偽物も多く出回っています。
本物と偽物を見分けるには上にあげた特徴以外にも見分けるポイントがあるので、今回はそうした希少な着物の見分け方について説明していきます。
手織りと機械織りを見分ける方法
大島紬はどれも非常に美しく手触りのいい着物ですが、そのなかにもさまざまな種類があるということは皆さんご存知でしょうか。
特に見分けがつきにくいものとして、機械織りと手織りという二種があります。
一見は同じように見えますし、素人目には見分けるのは非常に難しいです。
しかしポイントを掴んでおけば、誰にでも見分けられるものでもあります。
まずこの二種に関しての基本的な見分け方としてあげられるのが、「証紙」です。
これは夏物、冬物、に限らず反物の端末部分に付いているものです。
証紙は産地ごとの規定の基準を満たし、厳しい検査に合格した大島紬の反物に貼られている産地の「登録商標」、これが証紙です。
これによってそれぞれの産地が分かるほか、織り元の名前と厳しい検査を合格した証である検査合格印が押されています。
そしてこの証紙にはそれぞれに特徴があります。
たとえば奄美大島で織られた大島の反物の、手織りものには必ず、横に金色の「伝」のマークが入ります。
これは伝統工芸品マークであり、鹿児島県本場大島紬連合会によって認められたという印でもあります。
一方機械織りには伝統工芸品マークに鹿児島県絹織物工業組合の記載、もしくは伝統工芸品マークのシールではなく、絹織物を表す丸いシールが貼られています。
このようにして、場所ごとの証紙の違いと、また証紙の記載によって二種を見分けることができるでしょう。
ほかにも証紙によってこの二種もさらに細かく分類されています。
大島紬のマルキを見分ける方法
織る前にあらかじめ文様にしたがって染め分けた糸を絣糸(かすりいと)と言いますが、これを織り上げる際に両方に使った絣模様を経緯絣と呼びます。
色の合わせや織り方が難しいために非常に希少であり、また美しい着物を作り上げることができます。
経緯絣を作る時に、経糸や緯糸に含まれる絣糸の本数を表す単位が「マルキ」と呼ばれています。
これは大島特有の単位ですが、この数は5、7、9、12に分類されていて、一般的に多くの商品が出回っているのは7の数です。
この数が多ければ多いほど作り方は難しくなり、模様も複雑になります。
大島紬の場合は織物なので、模様を作るときに絣を一つ一つ手でくくることがないので、地開き、すなわち少し隙間のあいた柄を作る方が難しくなります。
他の絣の場合であれば柄が多ければ多いほど高価になりますが、大島紬の地開きの場合は一か所ずれてしまうと修正が難しいのでこちらの方が高価です。
こういった点で、マルキの細かさを分類した見分け方をするといいでしょう。
韓国産大島紬を見分け方ってある?
大島紬は本来鹿児島県奄美大島、鹿児島県鹿児島市の二か所で作られている反物ですが、しかし非常に美しく人気があることから実際は他の場所でも作られています。
国内のみならず海外でも人気のあるこの着物は、お隣の国韓国でも製造されることがあります。
基本的な製造工程や織り方としては他の地域にも伝承されていることがあるでしょうが、しかし大島紬の特長である本泥染は奄美特有のものなので他の地域で行うことは難しいです。
また、本泥染をやっている工房は現在では少なく、非常に希少な技法となっています。
この色合いを見ることで見分けることができるかもしれません。
テーチ木と呼ばれる木の幹を煎じた煮汁で二十回染め、染め専用に作った田んぼの泥に一回浸して素手で揉み込みます。
この工程を数回繰り返すことによって、テーチ木のタンニンと泥の鉄分が和合して、独特の艶やかな黒や焦げ茶に染まる、これが大島独特の染め方であり、九州の土地でしか作ることの出来ないゆえんでもあります。
そのため、本泥染の大島紬か、そうでないかを見分けたい場合には、この独特の染めで作られる色合いからひょっとしたら判断できるかもしれません。
村山大島、結城紬と大島紬の見分け方
村山大島紬は東京都武蔵村山市で織られている紬で、奄美大島や鹿児島県、宮崎県の本場大島紬とは、別の工程で作られている反物です。
しかし見た目の柄や色合いが似ていることからざっくりと、大島紬とまとめられることも多く、そこで混同が起こってしまっているのがひとつの問題です。また結城紬も大島紬と混同されがちな反物の一つです。
これらの見分け方にはどんなポイントがあるのでしょうか。
大島と村山紬は、どちらも縦横絣が特徴ですが、基本的な違いは、手織り機と機械機かの違いです。
村山紬の制作技法の特徴は、絣板(かすりいた)を用いた「板締め染色(いたじめせんしょく)」の技法が取り入れられていることと、精緻な経緯絣の模様が作られていることです。
板締め染色とは、模様の図案をもとに溝を彫って作った木製の絣板を使って糸を染める技法です。
さらに色を重ねる場合は「すり込み捺染」で別色をすり込んで、染め上がった絣糸を図案通りに並べ直してから織っていくという非常に手間のかかる方法を使っています。
これによって、村山は微妙なずれのある風合いの色合いになるのでこの点が見分けに使えるでしょう。
一方、結城紬との大きな特徴の差として糸があげられます。
大島は今は生糸で作られているので、実際は現在のものは紬ではありません。
結城紬は真綿を広げて使う手紡ぎ糸を使っているので、実際に触ってみるとこれら二つの手触りは全く違うものに感じられるはずです。